少年が住む夜だけが続く光の街~Gallery
Short Story & Drama
∴ Short Story
#01 灯りの時間

 1_1 イヴ『極夜(きょくや)都市。それは、夜だけが続く、太陽が(のぼ)らない時期のこと、 世界は光と闇でできている。 極夜が以前より長くなったこの街で、人々の心に不安の闇が生まれた。 だけど、確かな希望、夢に満ちた心に中の小さな光。もしも、その光を信じれば、信じる心こそが、闇を照らす光になる。 私はそう思っていたの・・・だから、お願いです。 神様。 どうか、私たちのこと見守り続けてください・・・。 神様、どうか、私たちのことを・・・あの、淡く輝く月の光のように・・・照らし、続けてください・・・。』<ナレーションみたいに、優しく。

SE:家などが燃える音、家が焼かれる音。イヴの泣く声が聞こえた


 1_2 イヴ「うっ・・・ふぅ・・・ううっ・・・おかっさぁん・・・おとぉ・・・さぁん・・・ふぅう・・・うぅぅ・・・」<泣く
 1_3 アルバ「どうして・・・なんで? ・・・・・・父さん・・・母さん・・・僕たちを・・・僕たちを置いていかないでよぉ!!!・・・父さん・・・母さん・・・僕は・・・・・・」

 1_4 アルバ「(父さん、母さん、僕はまた、彼方たちの名を呼びたい。 僕はまた、彼方たちの声が聞きたい。 帰る家があって、暖かい食卓だあって、それで・・・それだけで僕は・・・僕は幸せだったのに・・・ ・・・その日はとても、星が綺麗な夜だった、赤々と燃え滾る炎の中、絶望という恐怖にかられ、僕たちの帰るべき場所は両親とともになくなっていた・・・そのときに感じた感情、そのとき僕はいったい何を思ったのだろう? 今となっては、まったく覚えてはいない感情だった。 まるで時が止まったように、独りぼっち。 まるで・・・海の底に落ちていくように・・・深く・・・暗く・・・独り、ぼっち・・・・・・僕はいったい何を思ったのだろう・・・?)」<思う


 1_5 イヴ「この街はいつも暗い。 それはきっと、黒い大きなカーテンに包まれていて、そのカーテンに点々と小さな穴が開いている。 そして、その向こう側に大きな光があたっている。 だから、この暗い空には光がチラついている。 イヴはね、そう今まで考えていたんだ、」
 1_6 アルバ「そうか・・・それは、面白い考えだね、」
 1_7 イヴ「けど、本当は違う。・・・イヴが考えていたようなのは、とても夢のあるすてきな考えだねって先生、笑って言ってた。」
 1_8 アルバ「そうなんだ・・・」
 1_9 イヴ「・・・暗い、暗い、怖い・・・ねぇ、いつまでこの街は夜のままなの? もうこの街には太陽は戻らないの?」
 1_10 アルバ「・・・・・・大丈夫だよ、イヴ。 今はただ、太陽が休んでいるだけ、」
 1_11 イヴ「休んでいるだけ・・・? じゃぁ、もうすぐで街は明るくなるの?」
 1_12 アルバ「うん。もうすぐ夜は明ける・・・僕らの街は・・・夜を明ける・・・だから心配ないよ、イヴ。」
 1_13 イヴ「・・・うん!・・・よかった、イヴはね、早くこの街が明るくなるのが見たいの、」
 1_14 アルバ「そうなんだ、よかったね、イヴ。」

 1_15 イヴ「・・・お兄ちゃんは・・・どうなの・・・? 早く太陽が、朝が来てほしい?」
 1_16 アルバ「僕は・・・できればこのままがいいな、」
 1_17 イヴ「えっ、どうして?」
 1_18 アルバ「綺麗だからさ、ほら、外を見てごらん・・・?」

SE:イヴとアルバは窓側に近づき外を見た


 1_19 イヴ「きれ〜い・・・」
 1_20 アルバ「・・・灯りが燈る夜の街並、灯りだけがあふれるように光っている。 僕はこんな街が世界で一番綺麗な場所だと思うんだ、」
 1_21 イヴ「そうだね、そして雪もね、」
 1_22 アルバ「そうだね、今はもう冬なんだね、雪も白く光って見えるよ、雪の花びらみたいに綺麗だ・・・」
 1_23 イヴ「うん・・・んっ・・・ふわぁ〜・・・」<あくび
 1_24 アルバ「眠そうだね・・・じゃぁ、もうそろそろイヴは寝ておいで、一人で部屋に行ける?」
 1_25 イヴ「うん。 大丈夫。 でも、ランタンがないと見えないよ、先生の本読みたいし、それに真っ暗で怖い・・・」
 1_26 アルバ「そうだね、じゃぁ僕のランタンを貸すよ、」

SE:アルバは置いてあったランタンをイヴに渡す


 1-27 アルバ「はい。 火、気をつけてね、」
 1-28 イヴ「うん。 じゃぁ・・・」

SE:イヴはドアを開けて


 1_29 イヴ「・・・お兄ちゃんも早く寝るんだよ、」
 1_30 アルバ「うん。 わかってるよ、お休み、イヴ。」
 1_31 イヴ「お休みなさい。 お兄ちゃん。」

SE:ドアの閉まる音


SE:明るい街と、車のエンジン、フクロウの鳴き声が聞こえる夜の街。ソファーの上に寝転がっているアルバ、仕事から帰ってきたラッセルがそっと毛布をかけようとする。


 1_32 アルバ「ううっ・・・んー・・・ん? ・・・ラッセル?」
 1_33 ラッセル「あっ・・・すまん。 起こしてしまったか、」
 1_34 アルバ「ううん。 いいんだ、お帰りラッセル。 今日は早かったね、」
 1_35 ラッセル「ただいま、アルバ、いつも通りの真夜中だよ・・・こんな寒い所で待っていてくれたんだな、ありがとう。」
 1_36 アルバ「へへっ・・・正確にはソファーの上で寝ていたみたいだけどね、」
 1_37 ラッセル「はははっ・・・いいや、いいんだ、待っていてくれただけで、」
 1_38 アルバ「・・・うん。 イヴはもう先に寝かせたよ、」
 1_39 ラッセル「そっか、俺もできるだけ帰るのを早めにしないとな、」

SE:二人はソファーに座って、膝に毛布をかけた。


 1_40 ラッセル「はい。 今日は少し寒いからな・・・毛布使おうか、」
 1_41 アルバ「うん。 そうだね、雪も降っていたから・・・鳥肌がたっちゃうよ、」
 1_42 ラッセル「そうだな・・・ランタンだけじゃ・・・暖炉に火はつけるか?」
 1_43 アルバ「いいよ、このままで、このままのほうが暖かいよ、きっと、」

SE:ゴーンゴーンと時計の鐘が鳴り出した。


 1_44 ラッセル「あぁ、もう0時か、次の日になったな、」
 1_45 アルバ「時間がたつのはあっとゆうまだよ、ラッセル。」
 1_46 ラッセル「そうだな、あっとゆうまだな、時間は思うようにいかない。 だから毎日、一日一日、一瞬一瞬を大事に生きないとな・・・よいしょっと、」

SE:ラッセルがソファーから立った


 1_47 アルバ「?・・・何、どうしたの?」

SE:ラッセルは背伸びをしながら答える


 1_48 ラッセル「んー・・・ん、何って、し・ご・と、んー・・・ふぅー・・・小説書かなきゃな、実はずいぶん遅れていて・・・資料がたりないから調べ物もするし、」
 1_49 アルバ「じゃぁここで仕事して、僕も手伝うから、」
 1_50 ラッセル「・・・うん。 わかった、じゃぁ部屋から本とか持ってくるから待っててくれ・・・・・・生活のため、少しでも売れる話を作らないとな・・・」

SE:ラッセルは部屋を出て、本や資料などを持ってくる。ばたん!と戸の閉まる音。


 1_51 ラッセル「んーしょっ・・・とわっ!っととと・・・あぶない、あぶない、・・・・・・あれ?・・・アルバ?」

SE:部屋に戻ったラッセルは荷物を置く。アルバの姿が見えない。


 1_52 ラッセル「どこいったんだ、アルバは、・・・ん?」

SE:台所からコーヒーを持ってきたアルバが戻ってきてまた二人でソファーに座る。


 1_53 アルバ「・・・ねぇ・・・ラッセル、コーヒーのお砂糖は2個でいい?」
 1_54 ラッセル「あぁ、ありがとう。 気がきくな、」
 1_55 アルバ「寝ちゃったら仕事、終わらないでしょ?」
 1_56 ラッセル「そうだな、アルバも飲むか?」
 1_57 アルバ「・・・うん。 ミルクはどこだっけ・・・」

SE:アルバはミルクに手を伸ばす。するとラッセルがアルバのコーヒーに3個の砂糖を入れた


 1_58 アルバ「あっ!ちょっと!!」
 1_59 ラッセル「まだ君は大人じゃないだろ? 甘いの好きなくせに強がりしなくていいの、」
 1_60 アルバ「もう大人だよ!! 砂糖3個なんか子供だ!」
 1_61 ラッセル「ははははっ・・・甘いほうが人生みたいでちょうどいいんだよ、・・・ん?・・・!! お前! 指、やけどしているじゃないか!!?」
 1_62 アルバ「えっ? あっ大丈夫。 これ、さっきコーヒー入れたときにちょっとしちゃって・・・」
 1_63 ラッセル「ふー・・・まったく・・・ちゃんと冷やしておくんだぞ、」
 1_64 アルバ「わかってるよ、ラッセル。 心配性なんだから、というか、ヘタレなのかな?」
 1_65 ラッセル「ヘタレって・・・」
 1_66 アルバ「あははははっ・・・」<笑う
 1_67 ラッセル「・・・はぁー・・・・・・なんだろうね、君は」

SE:アルバはコーヒーをすする


 1_68 アルバ「・・・はぁー・・・」<ため息
 1_69 ラッセル「ん?・・・どうした? ため息なんか、」
 1_70 アルバ「・・・いや、別になんでもないよ・・・」
 1_71 ラッセル「悩みがあるみたいだな、」
 1_72 アルバ「・・・だって・・・やっぱいいや、」
 1_73 ラッセル「ん? どうした、言ってごらん? 俺に言えない悩みなのか??」

SE:少しの沈黙。


 1_74 アルバ「・・・最近変な奴に追っかけられる夢を見るんだ・・・」
 1_75 ラッセル「夢?」
 1_76 アルバ「うん。 俺みたいな・・・俺じゃないみたいな、なんかよくわかんないけど・・・暗い・・・」
 1_78 ラッセル「そのこが?」
 1_79 アルバ「いや、暗いっていうか・・・黒いイメージ。 冷たくて、なんか・・・そう、たまに出たり消えたり・・・ふらふら〜って、」
 1_80 ラッセル「・・・なんか・・・影みたいだな、」
 1_81 アルバ「影?」
 1_82 ラッセル「あぁ、ほら、たとえばこのランタンの灯り、ゆらゆらゆれて今にも消えそうな・・・でもずっと離れない。 離れることはない。 自分の分身。」
 1_83 アルバ「わかってるよ、影ぐらい。 めずらしいもんじゃないよ、でも、分身って・・・」<ちょっと困りながら
 1_84 ラッセル「あっあははは・・・そうか、そうだな、影なんかな、」
 1_85 アルバ「影、か・・・・・・なんか・・・怖い。」
 1_86 ラッセル「怖い?・・・お化けじゃないだろ、大丈夫だって、心配するな夢なんだから、」
 1_87 アルバ「うん・・・それと・・・」
 1_88 ラッセル「ん? なんだ?」

SE:少し静かになり


 1_89 アルバ「・・・夜が明けると、もうこうやってラッセルと一緒にいる時間が少なくなっちゃうだろな・・・なんて・・・」
 1_90 ラッセル「そっ・・・だな、たしかに、朝が来たら、前と同じ生活時間になってしまう。 俺たちが合う時間が少なくなってしまうな、アルバは学校へ行く時間が長くなり、俺は今までより忙しく働いて稼ぐ。 作家の夢を追いながら・・・」
 1_91 アルバ「ラッセルならいい物が売れるよ・・・でも・・・あえなくなるのが・・・」
 1_92 ラッセル「そんなことない!!」<叫ぶ感じに
 1_93 アルバ「はっ!・・・っ・・・」<びっくりして
 1_94 ラッセル「あっ!・・・ごめん。 けど、・・・ただ短くなるだけ、ただそれだけだ、そんなに変わらないよ、」<冷静にもどり
 1_95 アルバ「・・・うん。・・・そうだね、ありがとう。」
 1_96 ラッセル「アル・・・」
 1_97 アルバ「大丈夫、僕、ラッセルには今までいろいろ迷惑かけっぱなしだったから、」
 1_98 ラッセル「いや、俺はそんなつもりで!!」<あせって
 1_99 アルバ「ううん。 本当にありがとう。 ラッセル」
 1_100 ラッセル「・・・すまない、・・・なんか、俺・・・どうせっすればいいか、その、・・・子供なんかもったことなんかないから・・・だから・・・なんて言うか・・・」
 1_101 アルバ「だぁーかぁーらぁー 大丈夫だって! ・・・・・・でも、・・・今日一日だけでいいから、僕は・・・ラッセルといた時間を大事にしたい。 こうやって楽しく話せる時間が・・・だから・・・」
 1_102 ラッセル「うん。」
 1_103 アルバ「だから・・・だから・・・うっ・・・ひっくっ・・・僕は・・・」<泣く
 1_104 ラッセル「俺は大丈夫だから・・・アルバは今の時間を大切にしなさい。」
 1_105 アルバ「ラッセル・・・うっ・・・ううっ・・・ひっくっ・・・うっ・・・」<泣く

SE:アルバが泣く。ジンはそっと腕を回す。


 1_106 ラッセル「・・・泣くな、アルバ、もう大人なんだって言っていたじゃないか、」
 1_107 アルバ「うっ・・・泣いてない・・・そんなことも・・・うっ・・言ってない・・・バカ・・・バカバカ・・・バカッ・・・バッ・・・うぅ・・・くぅ・・・っ・・・」
 1_108 ラッセル「そうだね、俺はバカだね、大バカだよ・・・・だから泣くなよ、アールバくーん。 よしよし・・・ふー・・・・・・じゃぁ俺は仕事に戻らないとな、」
 1_109 アルバ「バッ・・・かっ・・・・・・何か・・・僕も手伝うよ・・・」
 1_110 ラッセル「手伝いって言われてもなー・・・ドジっこに何を頼めばいいのか、また怪我でもされたら困るしな〜」
 1_112 アルバ「ん、失礼な」
 1_113 ラッセル「はははっ・・・じゃぁ、そうだね・・・・・・こんな雪の降る日にぴったりなBGMを頼もうかな、」
 1_114 アルバ「!!・・・いいよ」

SE:アルバはヴァイオリンを取り出す。


 1_115 ラッセル「ヴァイオリンの音色っていいよね・・・どんな曲だろうね、楽しみだ、」
 1_116 アルバ「忘れられない僕らの時間を、旋律を・・・奏でてあげる。」

SE:アルバの演奏が始まり。[BGM:主題歌ヴァイオリンバージョン]



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