少年が住む夜だけが続く光の街~Gallery
Short Story
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クリスマスぷち企画でブログに公開したものです。
25日にブログを書くときに思いついて、つらつら書いただけなので、内容が微妙ですが;
こっちに公開しなおすため、変更したところも少々あります・・・よかったらご覧くださいませね

[少年達が見たクリスマスで思い出す僕の妹]

 クリスマスぷち企画


その日もまた、僕らの街に雪が降った。

白いもの、それは羽根のようにふわふわ。
花のようにひらひら。
鮮やかなもの、それは星のようにキラキラ。
鈴のようにりんりん。
今日はメリークリスマス。

「おーい!レノ!! 準備はできたか?」
「おぅよ!アルバ! こっちはいつでもOKだぜ?」
レノは大きなクリスマスツリーの前でこぶしをつくり腕をまげガッツポーズ。
僕は鼻で少し笑った。
「12月24日。 今日はクリスマス・イヴ。 もうすぐで帰ってくるぞ、」
今日はいつもの少し長めの髪を後ろで一つに結び、ラッセルはケーキや紅茶をテーブルにならべながら僕らに言葉をかけた。
時計の針は7時をまわっている。

茶色でシックにまとまっていたラッセルの家の中は、今日は見なれていた景色を変えた。
大きなツリーやさりげなく飾られていった小物達。
プレゼントとろうそくは去年より多め。
予想外だった外の景色は雪が降り、街をおおっていた。
ラッセルお気に入りのレコードをかけて、部屋はいっそうにぎやかになる。
これらは明後日には片付けられてしまう。
今日と明日だけの景色だ。

ピンポーン。

時間は少し止まった。

白い吐息をはいて少年達は部屋の灯りをすべてつけ、玄関前に走った。
バタバタバタ。
「メリークリスマス♪ イヴちゃん! そしておめでとうぉ!!」
ドアを勢いよく開け飛び出した。
レノサンタの登場だ。

「レノ・・・さん?」
ドアの前で赤いフードをかぶった少女は何がおこったのかよくわかっていないようだった。

「イヴ!遅かったな! さぁ、早く中に入って!」
今日はいつも落ち着いていた兄がとても楽しそうに妹の手をひいて、部屋に入った。

メリークリスマス。
そしておめでとう。
今日は君の大切な誕生日。


「あれ・・・シャドウは?」
イスに座ってケーキをかこいながら楽しそうにしていた空気が、僕の一言でその場が静まった。
ケーキのフォークを口に入れたまま、レノは静かに玄関へ戻る。
時計の針は7時30分をまわっている。

ガチャ。

また、少し時間が止まった。

「シャドウ。 お前、ずっとそこにいたのか?」
荷物を抱えたままのシャドウは無言のまま、雪を頭にのせ、部屋の中にづかづかと入っていった。
青い薔薇はいつもよりいっそうに青く光、白い霜をのせ、輝いて、シャドウの鼻はいつもよりずっと赤くなっていた。
「ドアが開けられないなら、チャイムを鳴らせばいいのに。」
それができないから待っていた、なんてことは彼は言おうともしないと僕は思う。
なぜなら、彼が僕と反対だからだった。

「なぜだ! なぜ僕が、こんな重い思いをしなければならないんだ!」
シャドウは毛布を頭からかけ、暖炉から動こうとはしなかった。
彼の服の色が、いつもより白っぽく見える。
「なぜだ! なぜなんだ!?」
わがままっぽさがじょじょにましていく。
だが、彼は影で寒さを感じないはず・・・。
「なーんだよ、シャドウ。 別にそこまで怒らなくてもいいだろう? 助かったんだから俺に感謝してもらわないといけないだろう?」
「だーれが、そんなダテメガネに礼を言わないといけないんだ!」
「なー! ダテメガネの何が悪いんだ!? メガネを侮辱すると、メガネでひどいめにあうからな!!?」
メガネ愛好会のレノはきっと自分よりメガネを愛している。
なんとなく僕はケーキをフォークでさしながら思った。

「ごめん・・・なさい・・・。 イヴと一緒にお買い物いったまま、いなくなっちゃったから・・・イヴが先に帰ってきちゃって・・・。 ごめんなさい・・・!」
ラッセルの隣で座っていたイヴが立ち上がり、暖炉の前でもめる二人に謝った。
さすが僕の妹だ。

「えっ!? あっ・・・その・・・」
「べっ 別に僕は怒っていないぞ、ただダテメガネが・・・」
「なっ!? あっ!でも! 俺も、その・・・大丈夫だから!!」

大丈夫なら、そのお互いの顔をひっぱっている手をほどいたらどうなんだろう。

「今日はイヴの誕生日でもあるんだ、二人とも喧嘩するんだったら、俺の家からも追い出すよ?」
ちょっと不敵に笑ったラッセルの顔。
はじめて見たかもしれない。

僕は立ち上がり、さっきレノと飾り付けをしたツリーの下にしゃがみこみ。
プレゼント一つとりあげた。

「はい。 イヴ。 これは僕からのクリスマスプレゼントだ」
僕はそっとイヴの小さな手のひらにのせた。

「うわぁー・・・ ありがとう。 お兄ちゃん。」
大きな目を見えないほど細くとじ、僕に笑みを見せた。
白い長い髪がさらりと肩から流れ落ちた。

「俺からのプレゼントは・・・はい。 いつもこんなのばかりだけど、いいかな? 新作なんだ、」
ラッセルは分厚い緑色のカバーをした本を2冊。
イヴに渡した。

「ありがとう。 先生。 今日寝る前にこの本。 読むね」

「えっと・・・次は俺だな! はい! イヴちゃんw 俺と色違いだ!!」
細長い箱をレノが渡し、かけてあったリボンをほどく。

「・・・えっと・・・これは・・・赤色の」

「ダテメガネだな、」
レノのプレゼントを覗き見たシャドウがイヴの言葉をさえぎった。

「おぅよ! しかも、メガネのこの端っこにキラキラしたシルバーストーンつきだ! いかすだろ!? 特別注文したんだぜ!」
自分のメガネの中心を中指でおしあげ、レノの目が光って見えた。

「あっありがとう・・・。」
今度はイヴの大きな目が点っと小さく僕には見えた。

「じゃぁシャドウは何をだすんだよ? プレゼント! まさか準備していないとか?」
「まさか、この僕がアルバの妹の誕生日を忘れるわけないだろう? でも、まぁ、たしかに 準備などはしていないけどな、」
「やっぱな、」

そのレノの自信はどこから来ているのだろう。
僕は二人の会話をじっと見つめていた。

「シャドウは何をわたすつもりなの?」
ラッセルがまた優しい声でささやいた。
僕の大好きな声だった。

「ふん。 イヴ。 ちょっと追いで、」
イヴは毛布にくるんだシャドウに呼ばれるまま、そばに近づいた。

「べつに、イヴはぜったい何かほしいとかは思っていないよ、」
「そうか、それなら僕からはこんなプレゼントをしよう。」
シャドウはイブの目線まで腰を曲げ、前髪をカチューシャであげたイヴの額にかるく唇をあてた。
とってもやわらかそうに・・・って

「えぇぇぇぇ!!?」
僕。
「なぁぁぁぁ!!!」
レノ。
「あらら・・・・・・」
あっさり、ラッセル。

「なっ何してんのシャドウ! お前! ずる!!」
「何がずるいだよ、レノ!そうじゃなくって、僕の妹に!!」
僕まで、焦ってしまう!!なんでいきなり!?

「・・・シャドウ・・・さん?」
「イヴ、今日は本当に“君が生まれてきてありがとう。”僕はそう思っている。」

「・・・!!」
イヴの白い肌が赤く染まるのが見えた、そして、僕も。
あの言葉を思い出した。

僕の母さんが言っていた。
僕の誕生日の日にだって、必ず。
お誕生日は“君が生まれてきてありがとう。”って言う日だってこと。
だから皆で“ありがとう”って言うためにパーティーをひらくってこと。
そして、必ず額にキスをしてくれたこと。

「・・・お母・・・シャドウ・・・さん・・・。 うっ・・・くっ・・・」
イヴの大きな目。
今度は瞳にいっぱいの涙。
小さな手、瞳から流れる水を一生懸命おさえようとする。

「ありがとう。 そして、おめでとう。」
シャドウは指を鳴らし、マジシャンのように青い薔薇をだした。
白い髪に一輪の青く輝く薔薇が咲く。

「かっこつけちゃって・・・」
「レノ、いいんだよ、素敵じゃないか・・・俺、これ本にしようかな・・・」
「マジで!? ・・・ってあれ、アルバ?」

マジ泣きは僕は後でしよう。

「どうしたの?」

「なんでもない。」
腕で目からこぼれそうな涙をぬぐい。
僕は、食べかけのケーキを後にして、部屋からヴァイオリンを持ってきた。
時計の針は8時30分をまわっている。

「イヴ!」

「!! ・・・何? お兄ちゃん?」
ぬれていた瞳はぱっと大きく見開き、僕のほうへ満面な笑みを見せ妹は振り向く。

「クリスマスプレゼントは渡したけど、イヴの誕生日プレゼントがまだたった。 ハッピーバースデー。 おめでとうイヴ。 そして、ありがとう。」

メリークリスマス。
そしておめでとう。
今日は君の大切な誕生日。
僕が奏でるこの演奏は、僕と君との思い出の曲。
これからは、ここの皆との思い出の曲として奏でていきたいよね。


その日もまた、僕らの街に雪が降った。

白いもの、それは羽根のようにふわふわ。
花のようにひらひら。
鮮やかなもの、それは星のようにキラキラ。
鈴のようにりんりん。
今日はメリークリスマス。

そして、ハッピーバースデー“君が生まれてきてありがとう。”
僕も心からそう思うよ、大好きだよ、イヴ。


END企画編



※“君が生まれてきてありがとう。”
#02 過去の旋律の2_35のイヴの台詞にて

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